少年法の意義ー【タリウム少女】24日に判決

名古屋市で知人の高齢女性を殺害し、仙台市で同級生2人に劇物の硫酸タリウムを飲ませたとして、殺人や殺人未遂などの罪に問われた元名古屋大学生の女(21)の裁判員裁判の判決が24日に下されます。

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元名大生の裁判員裁判の判決 24日に

名古屋市で知人の高齢女性を殺害し、仙台市で同級生2人に劇物の硫酸タリウムを飲ませたとして、殺人や殺人未遂などの罪に問われた元名古屋大学生の女(21)の裁判員裁判の判決が24日に下されます。

被告人が同級生二人にタリウムを飲ませ、治療困難な視覚障害を負わせたとされるのは16歳のときであり、また、名古屋市のアパートで森外茂子(ともこ)さん(当時77)を殺害したとされるのは19歳のときでした。

被告人は、裁判で「反省というものがわからない」「謝罪の仕方がまだわからない」などの発言をしており、話題になっていました。

また、検察側の証人の証言によれば、過去に、犯罪を犯すなら「少年法で守られている間に」やりたいという旨の発言をしていたとされ、少年法の意義について論争が起こっています。
少年法の意義とは、いったい何なのでしょうか?

少年法の存在意義とは?

少年による凶悪事件が起こるたびに、「少年法は廃止すべきだ」「少年にも刑罰を」という意見が噴出しますが、果たして少年法の存在意義とは何なのでしょうか?

まず、少年法とはそもそも、「少年の健全な育成」を目的(少年法第1条)とし、犯罪を犯した未成年者には、成人同様の刑事罰を下すのではなく、原則として家庭裁判所による保護処分を行うことを規定する法律です。

もっとも、一定の重大事件については、検察官に逆送し、刑事事件として扱うことになっています(少年法第20条1項等)。

このような規定が置かれているのは、少年事件がおよそ次のような特徴を備えているからです。

  • 比較的軽い犯罪がほとんど
  • 少年非行は一過的なもの
  • 生育環境の悪さ

などです。

まず、比較的軽微な事件が多いことについて解説します。

少年事件の8割は窃盗(59%)、横領(25%)で占められています。

さらに窃盗の手口でみれば、万引きと自転車の盗、オートバイ盗で占められています。

また、ここにいう横領は遺失物横領が大半で、具体的には放置自転車の乗り逃げがほとんどです。(『平成19年版犯罪白書』138頁)

少年がこのような軽微な犯罪を犯した場合でもすべて刑罰を科すとなると、それは親や学校などの社会が少年を監督できなかった責任を少年自身に課すことになってしまいます。

少年はいまだ判断能力に乏しいので、社会が少年を監督すべきだと考えられているのです。

また、少年非行は一過性のものです

一般に、少年の年齢が上がるにつれて検挙率が上がると言われており、それは非行からの「卒業」を意味していると解されています。

少年はこのように「可塑性」のある存在であり、教育次第では良い方向に導くことが可能です。

したがって、「刑罰」よりも「教育」を施すべきだ、と考えられるわけです。

さらに、法務総合研究所の調査によれば、2000年の段階で、全国少年院の中間期教育課程に在籍する全少年の53%にあたる2354名のうち90%が身体的暴力又は性的暴力を受けた経験を持ち、80%が少なくとも一つ以上の反復経験を有していたことがわかっています。

やはりここでも、少年が適切な教育を受けてこなかった背景が見え隠れします。

したがって、やはりまずは「教育」となるわけです。

少年法の根底にある思想は、国が親代わりとなって少年を保護・教育すべきだという「国親思想」です。

もちろん、一方で犯罪の被害者の存在に目を向け、そちらにも適切な保護を与えることが必要です。

しかし、少年に教育を施し、改善更生をしてから社会に出すことでより安全な社会を目指すことができます。実際、厳罰化は効を奏さないという疑いが濃厚です

2001年4月1日以降に犯した重大事犯により観護措置として少年鑑別所に入所し、2004年3月31日までに家裁の終局処理決定によって少年鑑別所を退所した278人を対象とした意識調査では、「あなたは、被害者を死亡させた事件を起こした16歳以上の少年は、原則として大人と同様に地方裁判所で裁判を受け、刑務所に入るなどの処分を受けることを知っていましたか」との質問に対し、少年院在院者の47.5%と刑務所在所者の51%が「まったく知らなかった」と回答しています(園部典生ほか「重大事犯少年の実態と処遇」法総研報告31号2006年431頁以下参照)。

このような結果からも厳罰化の犯罪抑止の効果は疑われています。

より住みよい社会のために非行少年をいかに処遇すべきか、もう一度考えてみてください。

この記事の作成者

カケコム編集部