「わら人形」で女性を脅迫 男に罰金20万円~脅迫罪?殺人未遂罪?〜

高崎区検(群馬県高崎市)は15日、好意を寄せていたとみられる女性の名前を書いた「わら人形」を放置し脅したとして、脅迫の罪で、52歳の男を略式起訴しました。高崎簡裁は同日、罰金20万円の略式命令を出したとのことです。産経新聞などが報じました。

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「わら人形」で女性脅迫 男に罰金20万円

高崎区検(群馬県高崎市)は15日、好意を寄せていたとみられる女性の名前を書いた「わら人形」を放置し脅したとして、脅迫の罪で、52歳の男を略式起訴しました。高崎簡裁は同日、罰金20万円の略式命令を出したとのことです。産経新聞などが報じました。

男は1月23日、同県内のゲームセンター駐車場に、好意を寄せていたゲームセンターを経営する当時52歳の被害女性の名前を書いたわら人形を放置、脅迫したとして逮捕されていました。人形は女性が普段車を止める場所に放置されていました。男はゲームセンターの常連客であったようで、昨年秋、女性にプレゼントを贈りましたが、女性が受け取らなかった後、男の来店は減っていったとのことです。

「わら人形」は麻製で長さ約20センチでした。長さ6.5センチの2寸釘が貫通していて、赤い塗料で顔のようなものが描かれていたといいます。

わら人形と犯罪~脅迫罪?殺人未遂罪?

今回の男は脅迫の罪で逮捕・略式起訴された後、20万円の略式命令を受けていますが、わら人形を放置する行為が、なぜ脅迫罪になるのでしょうか?

まず、条文を見てみましょう。

刑法222条1項「生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。」

刑法222条2項「親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。」

このように、脅迫罪は相手又はその親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に「害を加える旨を告知」することで成立します。そして、その告知の内容は、将来の害悪であって、しかも、告知者が左右しうるものであることが必要です。

一般的な丑の刻参りだけでは、当人に害悪を「告知」したとは言えないため、脅迫罪は成立しません。しかし、今回の事例では、わら人形に相手方の名前を赤い字で書いたうえで、それに釘を貫通させ、わざと相手が発見するであろう場所に放置しているわけですから、当然、相手の「生命」や「身体」に対する害悪の「告知」に当たるわけです。

また、脅迫罪の成立には、一般人を畏怖させるに足りる害悪の告知をする必要があります。一般人を畏怖させるに足りない害悪の告知は単なる嫌がらせにすぎません。この判断基準は告知の内容や相手方の性別、周囲の状況などを総合的に考慮して決定されます。

今回の害悪の告知は、わら人形、赤い字、釘…など、誰もが「呪い」や「死」を連想するようなものを揃え、相手の名前まで書くという態様です。相手方が女性であることを考えても、一般人を畏怖させるに足りる害悪の告知に当たるでしょう。

判例では、ほかにも、熾烈に対立する陣営の一方の者が反対派の者に、実際には火事がないのに、「出火御見舞申上げます。火の元に御用心」というハガキを出した行為が、一般人を畏怖させるに足りる行為だと認定されています(最判昭和35・3・18刑集14巻4号416頁)。このような状況でこんなハガキが来たら、火をつけられるものと怖くなるのが普通だと判断されたからです。

以上より、今回の事例にも脅迫罪が成立することになります。

脅迫罪については、こちらの記事でも詳しく紹介しておりますので、興味のある方はご覧ください。これって罪になるの?~「デスノートに名前書くぞ」小学校講師が児童に発言〜

では、今回の事例とは少しズレますが、丑の刻参りは殺人未遂罪に当たらないのでしょうか??簡単に検討しておきます。丑の刻参りは、相手を「呪い殺す」ものとして古来から伝わっているものですので、これを行えば殺人未遂罪が成立するんじゃないの?と思う方もいるかもしれません。

しかし、結論から言えば、丑の刻参りを行って相手を殺そうとしても、殺人未遂罪は絶対に成立しません

この場合は、未遂罪ではなく不能犯が成立するからです。不能犯とは、行為者は犯罪を実現する意思で行為したが、行為の性質上、結果を発生させることがおよそ不可能な行為を言います。殺人について考えれば、丑の刻参りも不能犯に当たりますし、砂糖に殺人力があると信じて相手に砂糖水を飲ませる行為などが不能犯となります。不能犯に当たれば罰せられることはありません。

不能犯と未遂犯の区別をいかなる基準で行うかは、古くから争いがあります。どちらに当たるか微妙な事案はかなりたくさんあるからです。難しいので詳しいことは省略しますが、判例は、絶対的不能の場合は不能犯、相対的不能の場合は未遂犯、というように区別していると言われています。

いかがでしたか?脅迫罪と殺人未遂罪についてでした。

この記事の作成者

ジコナラ編集部