入れ墨を理由に休学処分~法的問題は?〜

看護専門学校で入れ墨を理由に昨年6月下旬から1年間の休学処分になったのは不当だとして、東京都内に住む20代の女性が学校を運営する医療法人に約540万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴しました。7日に第1回口頭弁論があり、医療法人側は争う姿勢を示しました。

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入れ墨を理由に休学処分 女性が看護学校を提訴

看護専門学校で入れ墨を理由に昨年6月下旬から1年間の休学処分になったのは不当だとして、東京都内に住む20代の女性が学校を運営する医療法人に約540万円の損害賠償を求め、東京地裁に提訴しました。7日に第1回口頭弁論があり、医療法人側は争う姿勢を示しました。

訴状によると、女性はシングルマザーで、職業訓練の給付金制度を利用して昨年4月に同校に入学したとのことです。女性側は、入れ墨を消すには多額のお金がかかることから、子育てをしながらその費用を捻出するのは困難で、事実上の退学処分であると主張しています。

入れ墨を理由とした休学処分の法的問題は?

今回の事件では、入れ墨を理由とした休学処分の不当性が問題となっていますが、法的には何が問題となり得るのでしょうか?詳しく見ていきましょう。

まず、今回は、憲法の問題が絡む余地もあります。これは、女性の憲法上の権利(争いはありますが、自己決定権など:後述)が学内の処分により侵害されていると考える余地があるからです。

もっとも、憲法は本来、国家と私人の関係を規律するものなので、憲法の条項を直接または類推適用するものではありません。これは判例が示すところでもあります。この問題は、憲法の世界では「私人間効力」の問題と呼ばれるもので、とても深い議論はありますが、わかりにくいので、今回は省略します。

また、「入れ墨をする自由」というのは、前述のとおり憲法上「自己決定権」として保護される可能性がありますが、「自己決定権」は判例が正面から憲法上の権利として認めたものではありません。そういう点でも、今回は憲法上の権利が正面から争点になるわけではないと思われます。

やはり、今回の主な争点は休学処分の「合理性」に行き着くと思われます。

学校は、設置目的を達成するために必要な事項を学則等として一方的に制定し、これによって在学する学生を規律する包括的な権能を持っていますので、その規律が社会通念上合理的と認められる範囲内であれば規律もOK、ということになります(大学については「昭和女子大事件」:最判昭49・7・19、学校一般につき「バイク三ない原則違反事件」最判平3・9・3)。

そして、処分は学内の秩序を維持し、教育目的を達するための自律作用であり、その判断は学校長などの「合理的な裁量」に任せられることとなり、その裁量の範囲内にあれば処分は問題ない、ということになります。

具体的に言えば、休学処分という処分が、入れ墨を入れたという行為自体の態様だったり、本人の性格や反省の状況・ほかの生徒に与える影響、入れ墨を入れる行為を見逃した場合に生じる影響などを考慮して社会通念上合理性を認めることが出来れば、懲戒権者の裁量の範囲内にあるといえるわけです。

今回の事件の詳しい事実関係はいまだ不明ですが、さまざまな事実関係を考慮して休学処分が懲戒権者の裁量の範囲内か、が問題となるはずです。

いかがでしたか?入れ墨やタトゥーについて、今後社会がいかに受け止めるべきか考えていく良い機会なのではないでしょうか。

この記事の作成者

ジコナラ編集部