離婚の慰謝料の時効とは?離婚の慰謝料の時効期間と進行を止める方法

離婚の慰謝料を請求したい!!そんな時に気をつけねばなければならない制度があります。それは、離婚の慰謝料の「時効」という制度です。いったい「時効」とは、どういうものなのでしょうか?そして、無事に離婚の慰謝料を請求し、お金を回収するためには、どうすべきなのでしょうか?今回はそんな「時効」のお話です。

目次

離婚慰謝料の時効とは?~離婚慰謝料の請求を確実にするために~

皆さんは、「時効」という制度を知っていますか??日常生活では、「あの浮気はもう時効だよね…」なんて軽い意味でも使われたりしますが、実はとても重要な制度なのです。

離婚の慰謝料が「時効」にかかる前に請求を行わないと、なんと、二度と請求が出来なくなってしまうかもしれないのです。
  • 既に配偶者と離婚し、離婚慰謝料の請求を考えている人
  • 配偶者とまだ婚姻関係にあるが、将来的に離婚の慰謝料を請求しようと考えている人
  • 離婚の慰謝料や時効制度について知りたい人

は要チェックです!!

離婚の慰謝料の時効の前に…まずは離婚の慰謝料について解説


まず、離婚の慰謝料の「時効」について説明する前に、そもそも離婚の慰謝料はどんな場合に請求できるのかを簡単に見ていきましょう。

離婚の慰謝料の「時効」にもかかわってくることなので、注意してください。

離婚慰謝料・離婚原因慰謝料とは?

離婚の慰謝料といっても、大きく分けて

  • 離婚慰謝料
  • 離婚原因慰謝料

に区別されます。

離婚慰謝料とは、例えば、不貞行為や暴力・虐待などにより婚姻関係が破綻し、離婚することになったことによって生じた精神的苦痛についての損害賠償を言います。かんたんに言えば、「精神的苦痛をなぐさめるための損害賠償」のことです。

一方で、離婚原因となった個々の不倫や暴力行為による慰謝料は離婚原因慰謝料と呼ばれます。

離婚慰謝料も離婚原因慰謝料も法的には不法行為に基づく慰謝料の請求にあたります(民法710条)。

どんな時に離婚慰謝料を請求できるの?

離婚の際に慰謝料を請求できる場合は、前述のとおり
 
1.離婚をすることそれ自体から生ずる精神的苦痛に対するもの
 
2.浮気や暴力など離婚に至った原因行為から生じる精神的苦痛に対するもの
 
の2通りがあります。形式上、1.が離婚慰謝料にあたり、2.が離婚原因慰謝料に当たります。
 
2.が認められる典型例としては不倫や暴力行為・悪意の遺棄・婚姻生活の維持の不協力などですから、このような事情があれば慰謝料の請求が出来ると考えてよいでしょう。

一方で、単なる性格の不一致、などで有責行為によらずに婚姻が破綻した場合は、離婚慰謝料の請求は難しいでしょう。

離婚後でも離婚の慰謝料は請求できる

離婚後に元配偶者の不倫などの行為が発覚し、慰謝料請求をしたい…そんな場合でも慰謝料の請求は出来るのでしょうか??
 
結論から言えば、離婚後であっても慰謝料の請求は出来ます!
 
ただ、ここで注意せねばならないのが、先ほども紹介した「時効」です。時効にかかっていなければ離婚後でも慰謝料の請求は出来ますが、時効が完成している場合はもはや請求は出来ないと考えてよいです。

また、離婚時に「慰謝料の請求はしない」との取り決めを行っていた場合も請求が難しくなることもあります。

【離婚慰謝料の時効①】3年を過ぎると離婚慰謝料の請求ができなくなる

それではいよいよ本題である「時効」の説明に入ります。「時効」とはそもそも何なのでしょうか?

また、離婚の慰謝料が「時効」にかかるまでの期間はどれほどの長さなのでしょうか?

離婚の慰謝料の時効成立によって権利が消滅

実は、所有権を除くあらゆる権利は、一定期間権利を行使しない状態が続くと、権利自体が消滅してしまうのです。これを「消滅時効」と言い、今回説明する「時効」はこれに当たります。
 
これは、永続した事実状態にはさまざまな法律関係が積み重なることから、それに保護を与える制度です。また、権利の行使をサボっている人には法による助力を与えない、という意味もあります。時効にかかる期間は権利の種類によって異なります。

離婚の慰謝料時効(1) 不法行為の時効は損害および加害者を知ったときから3年

では、離婚の際の慰謝料が消滅時効にかかる期間は何年なのでしょうか??
 
前述のとおり、離婚慰謝料や離婚原因慰謝料は、不法行為に基づく損害賠償請求なので(民法709・710条)、被害者又は法定代理人が損害および加害者を知った時から3年間で消滅します(民法724条)。

したがって、例えば不倫の慰謝料であれば、配偶者の不倫と不倫相手を知った日から3年以内に慰謝料を請求しなければなりません。なお、不倫相手を特定できない場合は、時効期間は進行しません。

離婚の慰謝料の時効(2) 除斥期間にも注意~不法行為の時から20年

あともう一つ気をつけなばならないのは、「除斥期間」と呼ばれるものです。
 
「時効」と「除斥期間」は、法的には全く異なる概念ではありますが、ややこしくなるので、時効の長いバージョンと考えて頂いてOKです。
 
不法行為の除斥期間は不法行為時から20年とされているので、例えば不倫の慰謝料であれば、配偶者と不倫相手の不倫が始まったその日から20年が経過する前に請求しなければなりません。

除斥期間と時効のいずれか早い方が経過すれば請求は出来なくなってしまいますので、注意してください。

【離婚慰謝料の時効②】時効は具体的にいつから起算されるの?


先ほど、不法行為に基づく損害賠償請求は加害者及び損害を知った時から3年の時効にかかると説明しましたが、離婚慰謝料と離婚原因慰謝料で起算点にバリエーションがあるので、不倫の場合を例に紹介していきます。 

離婚の慰謝料時効の起算(1) 不倫そのものから生じる慰謝料

まず、不倫そのものから生ずる精神的苦痛に対する慰謝料についてみていきます。
 
これは当然、自分が相手の不倫そのものを知った時から消滅時効の期間を起算することになります。
 
不倫を知ってから3年を経過してしまえば、不倫そのものから生ずる慰謝料の請求は出来なくなってしまうので、その場合は不倫により婚姻関係が破綻したことから生ずる慰謝料という形や、不倫により夫婦が離婚したことから生ずる慰謝料という形で請求を行うことになります。

離婚の慰謝料時効の起算(2) 不倫により婚姻関係が破綻したことから生ずる慰謝料

不倫により婚姻関係が破綻したことから生ずる慰謝料の消滅時効は、不倫により婚姻関係が破綻した(ことを知った)日からカウントされます。
 
この時点から3年を経過してしまえばこれによる慰謝料の請求は出来なくなってしまいますので、不倫により夫婦が離婚したことから生ずる慰謝料という形で請求を行うこととなるでしょう。

離婚の慰謝料時効の起算(3) 不倫により夫婦が離婚したことから生ずる慰謝料

不倫により夫婦が離婚したことから生ずる精神的苦痛に対する慰謝料の消滅時効は、不倫により夫婦が離婚した(ことを知った)日から起算されます。
 
この時点から3年を経過する前に、早めに請求を行いましょう。

【離婚慰謝料の時効③】時効の進行を止めるには?


それでは、消滅時効にかかってしまうまでの間は、時効にかかることに不安を感じながら相手がお金を払ってくれることを待つしかないのでしょうか?決してそんなことはありません。時効は「中断」させることが出来ます

以下は、時効の「中断」について説明していきます。

時効の中断とは?~期間がゼロに戻る~

まず、時効の「中断」とは何なのでしょうか?
 
「中断」という言葉を聞くと、時効が「止まる」というイメージを持つかもしれませんが、厳密には違います。時効の「中断」とは、それまで進行してきた時効期間の効力を全く失わせることを言います(民法157条1項)。イメージとしては、時効のメーターを「ゼロ」に戻すことを言います。
 
したがって、時効を「中断」させれば、相手への離婚慰謝料の請求権が時効にかかることを、当面の間は防ぐことが出来るのです。

3つの時効の中断事由(民法147条)

それでは、時効はどんな時に中断するのでしょうか?
 
実は、時効の中断事由は民法上、明文で定められています。まず、もっとも代表的な時効の中断事由は、「請求」です。そして、ほかに「差押さえ、仮差押え又は仮処分」「承認」の3つが定められています。
 
いきなりそんな抽象的なことを言われても…という感じだと思いますので、以下で具体的にどんな場合が「請求」「差押さえ、仮差押え又は仮処分」「承認」に当たるのかを見ていきます。

具体的にどうやって時効を中断させればいい?

まず、一つ目の「請求」についてです。日常生活で「請求」というと、単に「お金を払え」!と言えばいいだけのような感じがしますが、法的には違います。ここでいう「請求」とは、訴えを提起すること、すなわち、裁判上で履行の請求を行うことです。単に裁判外で請求しても、これは後述する「催告」の意味しか持ちません。したがって、離婚慰謝料の時効を中断するには、離婚慰謝料の支払いを求める裁判を起こせばよいのです。
 
また、民事執行における「差押さえ」民事保全における「仮差押え又は仮処分」によっても時効は中断されます。したがって、離婚慰謝料の「差押さえ」や「仮差押え」をすることによっても時効を中断することが出来ます。
 
そして、最後に、「承認」とは何でしょうか?これは、債権者が行うものというよりは、債務者側が行うものです。具体的には、相手が返済猶予の申立てをしたような場合です。返済の猶予をお願いするということは、相手は自分に離婚慰謝料を払う義務があることを間接的に認めてしまっていると評価できます。したがって、債権者側から働きかけてこのような「承認」をさせる、というのも一つの手です。
 

【離婚慰謝料の時効④】すぐに時効の進行を止めるのが難しい場合は?


これまで、時効の「中断」について説明をしてきましたが、裁判を起こす必要があったりと、結構ハードルが高いです。そうすると、あともう少しで時効が完成してしまうのに、正式な手続きをとる時間がない!!なんてこともあり得ます。

そんな時はどうするか、以下説明していきます。

催告の利用

こんな場合は、「催告」を行いましょう。「催告」とは、先ほども言いましたが、「裁判外」で、履行の請求をすることです。これにより、時効の進行を暫定的に止めることが出来るのです。
 
催告は、口頭で行っても手紙で行ってもいいのですが、証拠を残すために、内容証明郵便で行いましょう。そうすれば、後で正式な手続きをとるときに、無用な争いがおこることを防げるのです。

催告の効果は暫定的なもの

もっとも、注意すべきは、「催告」の効果が暫定的なものに止まることです。
 
「催告」は、先述のとおり、あくまで正式な手続きをとる時間がないときに緊急避難的に行うものですので、結局は正式な手続きをとる必要があります。
 
具体的に言うと、催告から6か月以内に裁判上の請求などの一定の手続をとらないと時効の中断の効力は生じないのです。催告をしたからこれで安心…と放置してしまえば、気づいたころには時効が完成してる…なんてことになるので注意してください。

時効の中断とは別に時効の停止が起こることもある

実は、あまりメジャーではありませんが時効の中断とは別に、時効の「停止」という制度があります。

これは、時効の完成時点において時効の中断の措置をとることが類型的に困難な場合に、時効の完成を一定期間猶予する制度を言います。たとえば、時効完成間際に大地震が起こり通信手段も交通手段もなくなって、請求などが出来ない…という場合などが対象となります。このような場合は、障害消滅時から2週間経過まで、時効は完成しません(161条)。

めったにあることではありませんが、天災が起こって請求できない!なんていう場合は時効の「停止」を思い出してください。 

【離婚慰謝料の時効⑤】時効期間が過ぎてしまった場合は?


これまでは、どうやって時効の完成を阻止するか、について説明をしてきましたが、実際に時効期間が過ぎてしまった場合はどうなるのでしょうか?

基本的に請求は出来なくなると考えてよい

離婚の慰謝料の時効期間が過ぎてしまえば、基本的に離婚慰謝料の請求は出来なくなると考えてよいでしょう
 
残念ながら、一度期間が過ぎてしまえば、期間をゼロに戻す方法はありません。そうなれば、裁判上で請求しても、相手方が消滅時効を主張すれば、もう離婚の慰謝料の回収は出来なくなります。
 
そういう意味で、時効の期間が経過することだけは絶対に防がなければなりません。手遅れになる前に、さきほど紹介したような時効の中断の正式な手続きをとることをおススメします。
 

相手が時効の援用をしない場合や時効の利益を放棄した場合は例外

もっとも、時効の期間が経過してしまったとしても、絶対に離婚の慰謝料の回収が出来なくなるかと言ったら、必ずしもそうでない場合もあります。相手が時効の援用をせず、任意に払うと言ってくれた場合です。
 
実は、時効というものは、一定期間が過ぎれば当然に完成するものではないのです。時効の利益を得て、借金を払わないことを潔しとしない債務者の意思を尊重するために「時効の援用」という制度があり、時効の完成にはこの「時効の援用」が必要なのです。
 
また、相手方が時効の放棄をした場合も離婚の慰謝料を回収できます。もっとも、時効の放棄は、時効完成後に限って可能なものなので、注意が必要です(民法146条)。
 

相手が債務の承認をした場合~相手は時効援用権を喪失する

ほかにも、時効期間経過後に離婚の慰謝料の回収ができる場合があります。それは、相手方が時効期間の経過を知らずに、自分に対して、債務の一部を払ってきた、というような場合です。この場合、時効の放棄には当たりませんが、相手は信義則上、時効援用権を失います。したがって、その場合は、いまだ請求ができることになります。

離婚の慰謝料についてもっと知りたい人はこちらも合わせて読んでみてください! 

離婚の慰謝料の時効とは?離婚の慰謝料の時効期間と進行を止める方法のまとめ


離婚の慰謝料の請求を確実にするためには、まずは消滅時効の期間が経過しないように注意することが必要です。
 
せっかく得られる慰謝料なのに、自分が権利行使をしなかってことでそれが得られなくなってしまえば、とてももったいないですよね。もったいないで済むならまだしも、自分の生活がかかっているときはもっと困りますよね。
 
相手が早めに払ってくれるに越したことはありませんが、そうじゃない場合もあります。払いたくないからといって相手が時効の完成を待つ場合だってあるのです。
 
時効が完成しそう…なんてときは早めに時効の中断の手続をとりましょう

もちろん自分一人でもできますが、裁判に関わるものなので、実際の手続はかなり面倒です。早めに専門家のサポートを受けることをおススメします
この記事の作成者

カケコム編集部