債務不履行による損害賠償について抑えておくべきポイントとは?

債務というとまず「お金」のことが思い浮かぶのではないでしょうか。たしかに債務という語は日常的には金銭債務に関して使われていますね。しかし法律用語としての定義では「債務は、金銭に見積もることができないものであっても、その目的とできる」(民法399条)とあります。このように「債務」は、商品やサービスの販売にも、さらに言えば一切の「契約」によって生じます。したがって「債務」と一言にいっても非常に広い概念であるということが出来ます。この記事では特に「債務不履行」に関してまとめ、さらにその対応を検討していきます。

目次

債務不履行とは

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有効な契約を締結した場合に、契約者は相互に契約を守る義務を負います。

簡単にいえばこの義務が「債務」 と呼ばれるものです。債務の履行が何らかの形でない場合、これを「債務不履行」といいます。

しかし、債務が履行されないからといっても、そのすべてが「債務不履行」という違法行為にはならない場合があります。

要点としては①債務者に不履行の責任を帰することが出来るかどうか「帰責事由」、②「債務の本旨」がなんであるか、の二つが挙げられます。

債務不履行の種類

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「債務不履行」と一言で言っても、三つの場合に分類されますので、まずこの三つを確認しておきましょう。

履行遅滞 民法第412条

履行遅滞とは文字通り、債務の履行が遅れることを指します。しかしここに「履行が可能なのに遅れている」という帰責事由が見いだされるもののことを言います。 

では「いつから」が遅滞ということになるのでしょうか。ポイントは契約合意の内容つまり「債務の本旨」にあります。

1. 契約時に履行期限が確定されていた場合

「納期は○月○○日まで。」という契約をした場合にはこの期限を過ぎてからが履行遅滞の責任を負うこととなる。

2. 不確定な期限がある場合

「納期は○月末に。」などと幅を持たせて契約した場合には、この期限が到来したことを債務者が自覚した時から遅滞の責任を負います。

3. 期限を定めなかった場合

とくに時期を定めずに契約した場合には、債務者が履行の請求を受けた時から遅滞の責任を負う。
 

履行不能 民法第415条

もし取引の目的とされている特定の物が滅失してしまい「履行不能」になったらどうでしょうか。

このような場合には、もし債務者の側に帰責事由が見いだされるならば、415条にあるように「債務不履行」と同様とみなして、損害賠償請求を行うことができます。

この債務不能による損害賠償請求は債務不履行の代表的な事例と言えます。
 

不完全履行 

しかし債権をめぐる問題は多様化してきています。このような現状を踏まえドイツでは2000年初頭から「債権法の近代化Modernisirung des Schuldrechts」という動きが広がっています。

このなかで見いだされた債務不履行の形が「不完全履行」だと言えます。この不完全履行は、ドイツでは主に“積極的債権侵害positive Vertragsverletzung”  と呼ばれます。

何が「積極的」なのかというと、従来の債務不履行は「遅延」、「不能」といったように消極的な契約違反であったのに対して、部分的には契約を履行しているが、「債務の本旨」を意図的に全うしないという詐欺まがいのケースが増えてきています。

2003年2月のミュンスター地裁で「鍵のない貸家を借りるとき、鍵の新設費用は借主が支払うか、貸主が支払うか」ということが争われた。

判決は「貸家の鍵をなくした管理人が、新たな鍵の工事費用を負担しなければならない」というものであった。この判例はつまり、たとえ貸主が立派な家を貸したとしても(部分的に契約を履行している)、「鍵をなくした」という帰責事由があるので「積極的債務侵害」にあたるというものであった。

債務不履行の効果

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では債務不履行となった場合に、実際にどのようなことが出来るのでしょうか。法的に確保された三つの対応を見てみましょう。

<1. 履行の強制>民法第414条1項

「債務者が任意に債務の履行をしないときは、債権者は、その強制履行を裁判所に請求することができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。」(民法414条)この条文が強制履行請求の法的根拠となっています。条文を分解してみると、

①債務者は履行しようとすればできるにもかかわらず、「好き勝手(任意)」に履行しない場合、

②債権者から裁判所への請求によって、強制履行させることができる、

③しかし債務の内容が「強制」を許さない、例えばサービスなどの行為である場合は414条2項にあるように金銭的な補償に変えられることがある。

と理解することが出来ます。ポイントは債権者から債務者への直接の強制履行はできない事にあります。もしこれが出来てしまえばかなり暴力的な解決も許されてしまいますね…

<2. 損害賠償>民法第415条

415条には「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。

債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。」と書かれており、これがおもに債務不履行による損害賠償の根拠となっています。

ここでは主に次の二点が掲げられています。

①履行遅滞や不完全履行などにより契約内容が満たされないことによって生じた損害は債務者に賠償させることができる。

②債務不能という場合においても同様である。

しかし損害賠償は範囲や方法なども規定されており、多くの場合は実際の事例によって異なるといえます。

<3. 契約の解除>民法第541条

542条以降に定められているように、債務不履行の三つの場合に応じて、債権者は債務者に対して契約の解除を表明することが出来ます。

しかし契約の解除は単なる関係解消にはとどまりません。債務者は「原状回復義務」を負いますので契約時の頭金などを返還することが必要となります。

金銭債務の不履行と特則

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ここまでは一般的な消費者契約における債務不履行の問題を扱ってきました。しかし金融機関や政府との間で起きる「金融債務」に関する債務不履行は特殊な扱いをされています。

①金銭債務の債務不履行については「帰責事由」の有無が問題とならない

②金融債務の損害賠償は「利率」によって定められるので、実際の損失額は問題とならない

実際の条文を確認してみると以下のようになります。

「金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。3 第1項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない」419条

債務不履行による損害賠償について抑えておくべきポイントとは?のまとめ

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この記事を通じて、「債務不履行」とは単に金銭債務関してだけではなく、日常生活や日々の業務でも問題となりうるということが見えてきたと思います。

「契約」という事柄は相互に義務と権利を負うものですので、私たちは債務者となる場合も債権者となる場合もあるのです。

もし債務不履行を被ってしまったらどうすればいいのでしょうか。そんな時には迷わず弁護士に相談してみましょう。

実際の事例に合わせて裁判で損害賠償請求や契約の解消を勝ち取るためには弁護士の協力が必要不可欠なものとなります。

 <参考>
国民生活センター http://www.kokusen.go.jp/
債務不履行に関して https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%82%B5%E5%8B%99%E4%B8%8D%E5%B1%A5%E8%A1%8C
不完全履行に関して(ドイツ語) https://de.wikipedia.org/wiki/Positive_Vertragsverletzung
JURA FORUM  http://www.juraforum.de/lexikon/positive-vertragsverletzung
金銭債務の特則に関して https://ja.wikibooks.org/wiki/民法第419条

この記事の作成者

ジコナラ編集部