写真から”指紋”を盗まれる〜指紋を盗むことは窃盗罪には問える?問えない?〜

 「はいチーズ!」.....写真を撮るとき皆さんどんなポーズがお好きですか?誰でも一度はピースサインで写真に映ったことがあると思います。実はそこに写真から「指紋を盗み取られる」という恐ろしい可能性が潜んでいることをご存知でしょうか。今や多岐にわたる分野で利用されている生体認証、そこに潜む落とし穴に世間は大きな注目を集めています。

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3メートル先でも指紋くっきり

国立情報学研究所の越前功教授は、実験によりなんと3メートル先で撮影した写真であっても指紋をはっきりと読み取ることが可能である、とコメントをし、写真を撮ることが大好きな現代人の関心を高めています。 

また指紋だけではなく生体認証として使用される光彩や顔面そのものの情報を複製することも可能であるとの報告もあります。
 
生体認証が銀行のATM、オフィスのオートロック等様々な場面で使われている現在、非常に高解像度の写真を撮ることができるスマートフォンの普及やSNSの発達によりこの問題に無関係、という人は恐らくいないのではないでしょうか。
 

指紋を盗んだら?〜法律上の問題と罰則〜

先ほどから何度も指紋を盗まれると記述していますが、指紋などの生体情報は個人情報に当たります。
これを定めているのが平成29年5月施行予定の改正個人情報保護法です。

同法は「 特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字、番号、記号その他の符号であって、当該特定の個人を識別することができるもの」を「個人識別符号」として保護の対象にしています。(個人情報保護法 第2条 1項)この「個人識別符号」というものが指紋に該当します。
 
法律で保護されている以上、個人情報を盗むという行為は個人情報保護法違反になります。

ではそれを対象に処罰を与えることはできるのでしょうか?
 
まず、盗まれると聞いて真っ先に思い浮かぶのは刑法上の窃盗罪です。(刑法235条) 

指紋を盗むことは窃盗罪に当たるのでしょうか。
窃盗罪は原則として盗まれる財物の客体を形ある物に限定しており、指紋等の情報は基本的には窃盗罪の対象にはなり得ません。
また、刑法にはクレジットカード等から磁気的記録を不正に利用することに対して罰則を与える条項が存在しますが、(刑法163条)指紋等の生体情報はそれだけでは刑法上に言う「クレジットカードその他の代金又は料金の支払用のカードを構成するもの」とはみなされないので、罰則を与えることは難しいとされています。
 
では、民法上の不法行為責任に問えるのでしょうか?

民法には故意または過失によって他人の権利または法律上保護される利益を侵害した者にはこれによって生じた損害を賠償する責任を負う、という不法行為責任というものがあります。(民法709条)

指紋などの生体情報は法律上保護されるプライバシー情報であると言えます。

なので不正に利用すれば民法上の不法行為責任に問われます。

従って不正に利用された人は利用した人に対し損害賠償請求等の請求が行えます。
 
このように、改正個人情報保護法で保護される対象となっているとはいえ、指紋を盗むこと自体にこれといった刑事罰が存在しないのも事実です。

あくまで他人の個人情報を利用して行った行為についての罰則を記した条文がほとんどですので直接的に刑事罰を与えるということが出来ません。

不正アクセス禁止法違反などがその例です。

他人の情報(指紋を含む)を不正に利用してネットワーク上の端末にアクセスすると罰則(3年以下の懲役又は100万円以下の罰金)が与えられますが指紋を不正に取得したことに対しての罰則ではありません。
 
指紋や光彩、ときには顔そのものまで、盗まれてしまう危険性がある現代、被害にあってからではもう遅いかもしれません。

今後の法改正に期待がかかりますが、まずは自分の個人情報は自分で守ることができるように情報に対しては常に注意を払いましょう。
この記事の作成者

ジコナラ編集部