認知から逃げることはできるのか?|強制認知・裁判認知と認知の拒否について

不倫相手や交際相手が妊娠。そんなとき、「認知から逃げることはできるのか」と考える人は少なくないでしょう。この問いに対する答えを得るためには、まずは、強制認知(裁判認知)という制度について知る必要があります。

目次

不倫相手・交際相手が妊娠…強制認知(裁判認知)から逃げる手段はある?

不倫相手との間に、子供ができてしまった…。

こういう場合、「認知をしなければならない」とはよくいわれています。

ただ、養育費を支払う余裕がないなど、認知をしたくないという人もいるのではないでしょうか

「強制認知」という手続きを聞いたことがある人は、認知から逃げることはできないと考えていると思います。

認知から逃げることは可能なのでしょうか?

今回は認知から逃げることができるのかという疑問にお答えします。

強制認知(裁判認知)について


「強制認知」とは、簡単にいえば、認知から逃げることを禁止する制度です。
 
まずは強制認知(裁判認知)とはどういうものなのか?
強制認知(裁判認知)の基本的な情報を確認していきましょう。

裁判所が、子供などからの認知請求を認め、子と父親との法律上の親子関係を成立させることをいう

強制認知(裁判認知)は、裁判所が、子供などからの認知請求を認め、子と父親との法律上の親子関係を強制的に成立させる手続きです。

子、その直系卑属(孫など)、子や直系卑属(孫など)の法定代理人(親権者など)が認知請求をすることができます。

民法787条 子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父…の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。

任意認知がなされない場合に意味がある

強制認知をせずとも、父親が子供を任意認知(民法779条)することは多くあります。

ただ、民法779条は、認知請求することが「できる」と書いているだけです。

つまり、父親が父子関係を認めず、任意認知をしないという場合もあります。

もっとも、父親が任意認知を拒否する場合には、子供は養育費を得られないなどの大きな不利益を被ってしまいます

そこで、民法は強制認知(裁判認知)を認め、強制的に父子関係を成立させる制度を作ったのです。

また、民法779条には「父又は母」が認知できると書いていますが、母子関係があることは分娩の事実から明らかですので、事実上認知できるのは父親だけです。

条文の読み方には注意が必要です。 

民法779条 嫡出でない子は、その父又は母がこれを認知することができる。

強制認知(裁判認知)のメリット

任意認知で父親が認知を拒否した場合、強制認知(裁判認知)を請求することができるようになります。

強制認知(裁判認知)のメリットは、認知のメリットと同じく以下のようなものになります。

  • 子どもが親の相続人となることができる
  • 子どもが父親の戸籍に入ることができる
  • 子どもの養育費を請求できるようになる
  • 父親が子どもの親権者となることができるようになる

ただし、親権は、認知により当然に父親に移るわけではないことに注意が必要です。

認知の後、親権管理権届を提出することで父親に親権を移す手続きが完了します。

強制認知(裁判認知)のデメリット

認知というのは子どもにとって良いことばかりとは限りません。

強制認知(裁判認知)のデメリットも認知のデメリットと共通です。

具体的には、子どもが父親を扶養しなければならない場合があるという点があります。

ただ、実際に父親が子に扶養を請求するケースは多くないでしょう。

より大きなデメリットとして考えられるのは、認知により、戸籍を見ることで、子が父親を知ることができるようになってしまう点です。

子供に父親を知られたくないと思っていた場合でも、いずれ戸籍を見るときに、子どもが真実を知ることになります。

もっとも、このデメリットも子に父親を隠していない場合には問題ありません。

このように、強制認知のデメリットはそこまで大きいものではありません。

強制認知(裁判認知)を成立させるためには、まず認知調停の手続きを経る必要がある

家事事件手続法257条1項に「調停前置主義」というものがあります。

最後は裁判で決着をつけることになりますが、その前に調停で話し合う必要があるというルールです。

「裁判認知」というワードから裁判のイメージが強い強制認知ですが、実は、強制認知(裁判認知)についても、この調停前置主義というルールが適用されます。

つまり、認知請求をしたい場合には、裁判を提起する前に、まず認知調停を申し立て、認知をしてもらうよう説得する必要があります。

父親の死後3年を経過すれば強制認知(裁判認知)はできなくなる

強制認知(裁判認知)の手続きは、実は父親の死後にも行うことができます(死後認知 民法787条但書)。

ただし、父親が死亡してから3年が経過したら認知請求はできなくなることに注意が必要です。

民法787条 子、その直系卑属又はこれらの者の法定代理人は、認知の訴えを提起することができる。ただし、父…の死亡の日から三年を経過したときは、この限りでない。

強制認知(裁判認知)から逃げることはできるのか|認知の拒否について

強制認知(裁判認知)というものがどのようなものかはご理解いただけたでしょうか。

ここからは、「強制認知(裁判認知)から逃げることができるのか」という疑問に対する答えを見ていきましょう。

法律上、基本的に認知から逃げることはできない

民法第787条では、「父…の死亡の日から3年」認知請求できるとされていました。
 
つまり、死亡後ですら認知請求が認められるわけですから、父親が生きている限り認知請求され、認知が成立する可能性があるということになります。
 
ただ、認知請求をすることができる人は子や孫やその親権者などでしたから、子や孫が全員死亡していた場合には認知請求されることはありません。
 
しかし、自分の生きているうちに子や孫が全員死亡することになることはあまりないでしょう。
 
基本的に強制認知からは逃げることができないものなのです。

認知請求をしないという合意や契約は無効

判例上、婚外子(非嫡出子)が生まれたときに、父母の間で「認知請求をしない」という合意をしても、子供の認知請求権を奪うことはできないとされています。

認知をしない・認知請求をしないという契約をして認知から逃げることも許されていないことになります。

子の父に対する認知請求権は、その身分法上の権利たる性質およびこれを認めた民法の法意に照らし、放棄することができない
最判昭和37・4・10民集16巻4号693頁

話し合って、認知や認知請求をしない親子関係について相手側に理解してもらうしかない

このように、認知・認知請求をしないという合意をして相手を拘束することはできません。

したがって、どうしても認知から逃げることを考えるのであれば認知を控えてもらうよう母親側に訴えかけるしかありません

十分に話し合い、認知や認知請求をしない親子関係を望んでいるという考えを理解してもらうことが鍵になるでしょう。

不本意な認知請求をされてしまったら…

基本的に認知から逃げることはできませんが、不本意な認知請求をされてしまった場合にはどのように対応すればよいのでしょうか。

そもそも、自分の子じゃなければ、それを証明する

認知から逃げることはできないといっても、認知請求をされたら必ず父子関係が成立するわけではありません。

認知により法律上の父子関係が成立する前提として、父子に血縁関係が必要なことは当然です。

自分の子じゃないといえる場合には、調停・裁判で自分の子でないことを主張・立証しましょう。

現代では正確なDNA鑑定もできるため、自分の子でないことを立証することは容易になってきています。

認知をしたくない理由や経緯を話してみる

認知をしたくない理由には様々なものがあるでしょう。

理由によれば、正直に話すことで、母親側が認知請求を取り下げてくれる場合もあるかもしれません。

母親側が金銭的な理由のみで認知請求をしている場合には、一定の解決金を支払うことを打診してみるのも手段の一つです。

それでも認知請求されたら法的に逃げることはできないから、受け入れる

婚外子(非嫡出子)は父親が望まずに生まれた場合も多く、認知から逃げることを考える場合も少なくないでしょう。

しかし、法は認知から逃げることを許していません。

その意味を今一度考えたとき、父としての責任から逃げることはできないということを受け入れることもできるのではないでしょうか。

男女問題に強い弁護士に相談を

認知した後からでも、養育費や親権や相続権については、解決・改善できる問題が残っている場合があります。

認知が不本意だという場合であっても、男女関係に強い弁護士に相談することをおすすめします。

強制認知(裁判認知)とその拒否について知りたい人は合わせてこちらも読んでみてください

認知から逃げることはできるのか?|強制認知・裁判認知と認知の拒否についてのまとめ

任意認知を拒否しても、認知請求されてしまう場合もあり、認知から逃げることは難しいことがわかりました。

しかし、認知をした後に解決・改善できる問題も数多くあります。

自分の望む親子関係を作っていくためにも、諦めずに男女関係に強い弁護士に相談してみましょう。

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この記事の作成者

ジコナラ編集部