労働災害を防止するために・・労働者目線でできることとは?

労働災害を防止するためにはどんなことが必要なのでしょうか?労働安全衛生法という法律があります。働く環境を「安全に」「衛生ということは裏を返すと、働く環境というのは放置したままだと「危険で」「病気を引き起こす」可能性があるということです。ですが、働く環境は経営者が用意するもの、と考えないでください。労働災害で「痛い目」に遭うのは労働者なので、働く人自身が労働災害の防止を考えることが大切なのです。

目次

労働災害を防止するのは本来使用者の役目ですが、労働者目線でできることとは?

労働者に仕事をさせる人のことを使用者といいます。

労働災害を防止する方法を考えなければならないのは、まず第一に使用者たちですが、彼らは「利益を生まないことにカネをかけること」に十分頭を回せていないこともあります。

労災の防止策は、利益を生まないのにコストがかかるので、使用者は積極的に取り組むことを怠っている場合があります。

なので、極端に言えば労働者は「会社が労災対策を取ってくれたらラッキー」「でもアンラッキーな事態を想定して用心しなきゃ」という心構えが必要です。

ちなみに、実は「労災防止は利益を生まない」というのは本当ではありません。長期的なビジョンを持っている、いわゆる「ちゃんとした経営者」は、労災防止を徹底して利益を上げているのです。

労働災害の防止のために知っておきたい「起こりがちな労災」

まずは、起こりやすい労災について紹介します。
 
といっても、難しく考える必要はありません。「労災あるある」ぐらいに軽く覚えておいた方が、記憶に定着するかもしれません。 

起こりがちな労働災害(1) 機械に体を挟まれる

労災が最も大きな問題になるのは、工場と工事です。この2つの現場には、強力な破壊力を持つ機械があります。例えば自動車工場の100トンプレス機に人が挟まれば、即死です。地下の工事現場に有毒ガスが充満しても作業員は死んでしまいます。

労災に最も気を付けなければならない労働者は、工場と工事の方々です。

起こりがちな労働災害(2) 過労によるうつ病

機械による事故は「目に見える」悲惨さがあるため、国や企業が長い時間をかけて様々な対策を講じてきました。いまでは作業員の安全を守ることがビジネスになっているくらいです。

しかし事務職が労災の危険にさらされていないかというと、そんなことはありません

しかも働き過ぎによる心の崩壊は、「他人の目には見えにくい」労災で、対策が取りにくいとされています。最近、特に問題になっているのが、過労によるうつ病の発症です。

日本人は、一生懸命働くことは美徳であると思う傾向にあるので、働きすぎて動きが鈍くなっている人や、そもそも働こうとしない人のことを「怠け者」と考えがちです。

しかし労働問題の専門家や精神科医たちの研究で、過労とうつ病と自殺の因果関係が証明されました。つまり、過労によるうつ病は、「機械による事故」同様、死を招きかねない労災なのです。 

起こりがちな労災(3) 通勤中の事故

労災は、労働中にふりかかる災害のことです。そして通勤は労働の一部です。

ですので通勤途上で不慮の事故に遭ってケガを負った場合、労災とみなされます。

休日の散歩中に交通事故に遭っても労災ではありませんが、通勤のために同じ道を使い同じ事故に遭ったら労災になります。

このことはしっかり覚えておいてください。というのも、会社が「それは通勤中とみなさない」と言う場合があるからです。
 
労働者も「そう言われれば通勤中ではなかったかも」と認めてしまえば、労災ではなくなり、様々な補償を受けられなくなります

労働災害を防止するには?

それでは具体的に、労働者が「どう対策を取ったらいいのか」について解説していきます。 

労働災害を防止するには(1) 責任者の指示に従う

労働者が簡単に、そしてすぐに実行できる労災防止策があります。それは、責任者の指示に従うことです。

働く現場を、安全で衛生的な場所にするのは使用者の責務です。使用者はさらに、安全かつ衛生に作業ができるルールをつくっています。

労働者がそのルールを守れば、安全と衛生が保たれるのです。上司の言うことをきく、これも立派な安全対策なのです。 

労働災害を防止するには(2) 道具の整備をしっかりとする

工場や工事の作業員は、工場長や現場監督から「道具を整備しておけ!」と何度も注意されてきたと思います。

それは、きちんと整備された道具は、機械をしっかり動かすことができるからです。機械の誤作動は労災リスクを高めます。機械を正常運転させるために、道具の整備が欠かせないのです。

また、道具をなくしてしまったり、道具がうまく動かなかったりすると、作業が遅れます。現場は危険がいっぱいですから、作業が遅れるということは、それだけ長く危険にさらされることになります。

よく工場に「整理整頓」の大きな文字が掲げられていますが、これは見た目の良さを追求するというよりは、職場の安全に欠かせない行動原則なのです。 

労働災害を防止するには(3) 職場環境を改善する 

日本の労働は良くも悪くも世界の注目を集めていて、例えば「過労死」は「KAROUSI」として認知されてしまっています。

一方で「改善」は「KAIZEN」として世界中のモノづくり企業が手本にしています。カイゼンの生みの親は、トヨタ自動車の工場とされています。

カイゼンは大量の製品を正確につくりあげるためのものですが、職場環境の安全と衛生にも大きく貢献します。

例えば、ベテラン作業員が細心の注意を払ってもケガをしてしまう作業があったとしたら、作業効率がとても悪いので、それはカイゼンしなければなりません。

カイゼンすると作業効率が上がるだけでなく、新人の作業員がその仕事をしてもケガをしないで済みます。

作業の効率化と、職場の安全衛生を同時に追求できるのが、カイゼンであり、日本が世界に誇る「発明品」といえるでしょう。 

労働災害を防止するには(4) 人間関係を整える

労働災害の防止策で「責任者の指示に従う」ことの重要性を解説しましたが、「指示をする」と「指示を受ける」の2つの行為の間には「人間関係」が存在します。

職場の人間関係を円滑にしておくことは、労災防止につながります

ある作業員が、他の作業員の仕事ぶりを見ていて「危ない方法で仕事をしているな。もっと楽な方法があるのに」と気付いたとします。このとき、2人の人間関係が悪ければ、助言することをためらってしまうでしょう。

職場のチーム内の雰囲気を「何でも注意し合える仲」にすることは、安全と衛生にとってとても重要なことです。

このことは工場や工事現場だけに限ったことではありません。事務職でも、落ち込んでる様子の同僚に「どうしたの?」「眠れてる?」と声をかけることは、うつ病対策につながります

労働災害を防止するには(5) 「働きすぎ」もNG

もし毎月の残業時間が100時間を超えている人がうつ病を発症したら、ほぼ100%の確率で労災認定されるでしょう。

長時間労働は、労災の「種」です。働きすぎないことは、労災防止になります。

働きすぎは心の病気だけではなく、心臓や脳血管の病気を引き起こすことも分かっています。働きすぎないことは、「自分でできる労災対策」のひとつです。 

労働災害を防止するには(6) 安全教育を徹底する

安全教育は、使用者が行うべきことです。使用者は、安全に働くルールをつくるだけではダメで、そのルールを徹底させる教育をしなければなりません。

しかしこの20年で日本人の働き方は様変わりしました。中途採用や短時間労働が普通になり、さらに派遣社員や契約社員ばかりの職場も珍しくありません。

ということは、使用者による安全教育が、すべての働く人に届いていない可能性があります。

そこで働く人自身が、安全教育を徹底する必要があります。「安全な作業方法」や「衛生的な働き方」は、知っている人が知らない人に教えてあげなければならないのです。

労働安全衛生法は、労働者自身が労災防止のための自主的活動を行うこと想定しています(第1条)。最後は自分の身は自分で守らなければならないのです。 

労働災害を防止できなかったら?|労災認定の手続きを

不幸にも労災が発生してしまったら、つまりあなたが仕事中にケガをしたり、仕事が原因で病気になってしまったら、どうしたらいいでしょうか。労災認定の手続きを開始してください。

労働災害を防止できなかったら(1) 労災認定の手続きをしましょう

社長や経営者たち使用者は、労働者を雇うときに労災保険をかけなければなりません。「保険」とは将来の事故のために事前に保険料を支払っておく仕組みですので、原則、事故のときに補償を受けたい人が保険料を支払います。
 

しかし労災保険は珍しい保険で、労働者は保険料を支払わなくていいのです。使用者が保険料を負担しなければならないのです。

そして、労災認定の手続きは、労災の被害を受けた労働者が労働基準監督署に請求して初めてスタートします。

ただ労災認定の手続きは色々な書類が必要になるため、使用者の協力が欠かせません。また、労災認定を労働者に代わって行うことを「会社の義務」として考えている企業もあり、それは正しい認識といえるでしょう。

なので「労災かも」と思ったら、まずは職場の上司や本社の総務部に相談してください。

労働災害を防止できなかったら(2) 注意!労災認定には時効があります

労災認定の手続きには、時効があります。

つまり「これは労災かも」と思って上司に報告したものの、上司から「そんなの労災になるわけないだろ! 自己責任だ!」と言われて引き下がり、やっぱり後から「あれは労災だ。会社は労災を隠した!」と訴えても、時すでに遅しとなる可能性があります。

時効は主に2つあり、死亡と障害に関わるものは5年それ以外は2年です。

労災認定の時効について詳しくは労災申請には時効があるのでご注意を!早めの申請を心がけましょうを参考にしてください。

労働災害を防止できなかったら(3) 労災専門の弁護士に相談してみよう、そして2度と同じ労災を繰り返さぬように

「専門家への相談」としては、弁護士がとても力になります。

弁護士は、刑事事件に強い人や離婚訴訟に詳しい人など、専門に分かれています。当然、労働問題に詳しい弁護士もいます。

しかし最近の労働問題は複雑になっているので、同じ労働問題専門の弁護士にも、残業問題が得意な人、パワハラを専門にしている人がいます。

ですので、労災の訴訟を多く手掛けている弁護士が、最も強い味方になります。

弁護士の力を借りる目的は、実は「訴訟を起こさないため」だったりします。というのも、訴訟というものは、訴訟を起こす労災被害者側にも大きな負担となるからです。

労災専門の弁護士であれば、会社や労働基準監督署と調整をはかり、被害労働者が納得できる解決策を探してくれます。もちろん訴訟になればさらに力を発揮してくれます。

そして、労災被害者が気を付けなければならないことがあります。それは「同じ労災を繰り返さないこと」です。同じシチュエーションで同じ事故を発生させ同じ労災が起きてしまったら、それは「労働者のせい」と認定されかねないからです。 

弁護士に相談する

労働災害を防止するために・・労働者目線でできることとは?のまとめ

労働者は労災保険制度で守られている、ということを忘れないでください。

というより、労災保険で守られているから安心して働けるのです。

そして、使用者は「労災が嫌い」ということも覚えておいてください。労働環境を安全に衛生的に保つのは、使用者の責務です。労災が発生すると、使用者は行政から「その責務を果たしていない」と責められることになります。

なので、労災嫌いな使用者は、労災を隠そうとします。労災被害を受けた労働者に「労災申請をさせないぞ」と脅すだけでなく、「これでなんとか目をつむって」と現金を渡したりすることもあります。

しかし時間が経過した後に症状が出る病気やケガもあります。使用者の悪い指示に従って労災申請しないと、時効の壁にぶつかって、なんの補償も受けられず、ただただ後遺症に苦しむということになりかねません。

この記事の作成者

カケコム編集部