労災保険とは?働く人が絶対に知っておくべき【労災】についてイチから解説!

労災保険とは何か?と聞かれてすぐに答えられるでしょうか?「加入しているのに意外に知られていない保険」のひとつに、労災保険があります。仕事中に災害に見舞われたときに、治療の面倒をみてくれる保険です。労災によって年間12万人近くの人が亡くなったりケガをしたりしています。万が一の事態に備えて、労災保険について知っておきましょう!

目次

労災保険とは何か?イチから解説します

労働者が労災保険についてあまり知らないのは、2つ理由があります。

1つは、保険料を自分で支払っていないからです。保険料は雇い主が支払ってくれています。自分の財布からおカネが出ていかないので「保険に入っている」感が薄いのでしょう。

もうひとつの理由は滅多に使わないからです。「ああ、この保険に入っておいてよかった」というエピソードを聞かないので、保険のメリットを実感できないのです。がん保険のようなテレビコマーシャルもありませんし。

しかし、勤務中にケガをしたり病気になったりして働けなくなったとき、収入はどうしますか治療費はどうしますか。万が一死亡してしまったら、家族はどうなりますか

そのようなことを想像すると、労災保険のありがたさがご理解いただけると思います。

労災保険とは?

労災保険の知識を身に付けるときに重要なのは「流れ」です。というのも、労災保険の適用を受けることは、かなり複雑な手続きが必要だからです。色々な役所や機関が登場します。その詳細をすべて覚える必要はありません。

「次はこうなるはず」という段取りさえ知っておけば、あとは色々な人がアドバイスしてくれます。

労災保険とは?(1) 労働中や通勤中に起きた災害への補償

労災には、働いているときに見舞われる「業務災害」と、通勤途上で被害に遭う「通勤災害」の2つがあります。

両者には、「業務と関係した動き」によってケガまたは病気が生じた、という共通点があります。 

労災保険とは?(2) 健康保険との違いは?

労災保険は治療などの療養のときに使われる保険です。また、健康保険も療養のときに使います。両者は、「労災によるケガまたは病気かどうか」によって使い分けます。

また、労災保険の保険料は全額使用者が負担してくれますが、健康保険の保険料は使用者と労働者が半額ずつ支払わなければなりません。

給与明細を見てみてください。健康保険料は給料から引かれていますが、労災保険という項目はありません

また、健康保険には健康保険証がありますが、労災保険には「手帳のようなもの」はありません。

さらに、健康保険を使って療養を受けた場合は療養費の3割を自己負担しなければなりませんが、労災保険で療養を受けた場合は、自己負担はありません

労災保険とは?(3) 加入できる人の条件はある?

労災保険は、ほぼすべての働く人が加入できますが、一部の例外があります

「ほぼすべての労働者」というのは、正社員はもちろんのこと、1日だけ働く臨時アルバイトも加入している、という意味です。

働いて給料をもらっているのに、労災保険が適用されない「一部の例外」となる労働者は、次の人たちです。

①従業員が5人未満の個人経営の農業と水産業

②常時使用する従業員がいない個人経営の林業

③国の直轄事業など

④事業主や経営陣

⑤事業主と同居する親族の従業員

ご覧の通り、「労災に加入できない条件」は、かなり特殊です。

労災保険の「給付」の種類とは

労災保険制度は、労災の被害に遭った労働者に対して様々な「給付」をしてくれます。給付は「現物」と「現金」の2通りがあります。

この「給付」を受けられることが、労働者にとって最大のメリットとなります。

労災保険の種類とは(1) 療養(補償)給付

最も一般的な労災保険給付は、「療養(補償)給付」です。業務災害の給付には「補償」が付きます。通勤災害の給付には「補償」が付きません。

療養(補償)給付は現物、つまり治療行為などの療養が支給されます。療養(補償)給付による療養が受けられるのは、労災指定医療機関のみです。

労災指定医療機関で労災による療養を受けるときは、健康保険証は必要ありません。ですので3割負担もありません。療養費は全額、労災保険制度が負担してくれるのです。

では、労災の被害を受けたときに、労災指定医療機関以外の医療機関に運ばれたらどうしたらいいでしょうか。その場合は、療養の費用、つまり現金が支給されます

ただこの場合も健康保険は使えませんので、まずは労災被害労働者が医療機関に対して療養費を全額支払い、後から労災保険から療養の費用が被害労働者に支給される仕組みです。

労災保険の種類とは(1) 休業(補償)給付

労働には「NOワーク、NOペイ」の原則があります。働かない(NOワーク)人に対しては、会社は給料を払わなくて(NOペイで)よい、という意味です。

この原則は、労災に見舞われた労働者にも適用されます。つまり通勤途上で事故に遭って入院して働けなければ、会社はその分の給料を支払わなくてもいいのです。

しかしそれでは労働者の生活が大変なことになります。そこで労災保険には、労災でNOワークになって、NOペイとなった分の給料を補償する制度があります。

それが休業(補償)給付です。

これは、休業した4日目から、休業1日につき大体日給の80%が支給されます。「大体」というのは、休業特別支給金というその他の制度によるおカネが加算されたり、細かい計算方法があるのですが、あまりに細かすぎるのでここでは省略します。

月20日出勤して月給20万円の人だと、大体1日の休業で8千円給付される、と覚えておけばOKです。

労災保険の種類とは(1) 障害(補償)給付

ケガや病気は、必ず治るというわけではありません。そして、完全に治っていなくても「これ以上治療を行っても良くなる見込みがない」と医師に判断されることがあります。

これを「症状が固定した状態」と言い、この状態のことを「障害」と呼びます。

障害は多くの場合、一生涯に渡って続きます。そこで労災保険の「障害(補償)給付」には年金タイプの給付があります

労災によって障害等級第1~7級の障害が残ってしまったら、日当の131日分(第7級)から313日分(第1級)の年金が支給されます。その他に、一時金や加算が支給されます。

「日当」はあくまで目安の金額で、実際は細かな計算式で算出します。

障害等級第8~14級の人には、一時金が支給されます。一時金の金額は56日分(第14級)から503日分(第8級)で、これにも加算があります。 

労災保険の種類とは(1) 遺族(補償)給付や葬祭料(葬祭給付)

労働者が労災によって死亡してしまった場合、遺族に年金が支払われます。遺族の人数などによって年金額は異なりますが、最低153日分~最高245日分となっています。

また遺族特別支給金という一時金が300万円支給されます。その他、加算もあります。

遺族には葬儀料も支給されます。

労災保険の種類とは(1) 傷病(補償)年金など

先ほど、「障害とは、完全に治っていないが症状が固定した状態」と解説しました。では、ずっと症状が固定せず治療を受け続けた場合はどうなるのでしょうか。

労災保険制度では、労災によるケガまたは病気の療養が始まって1年半を経過しても症状が固定せず、障害等級第1~3級相当の状態だったら、245日分~313日分の年金が支払われます。第4級以下の人は対象外となります。

これを傷病(補償)年金といいます。

さらに介護(補償)年金という給付もあります。障害(補償)年金または傷病(補償)年金を受けている障害等級第1級の人が介護を受けているときに支給されます。

第2級の人は、①精神・神経障害、②胸腹部臓器の障害に限り、支給されます。

第3級以下の人は介護を受けていても介護(補償)年金の対象にはなりません。

労災保険がおりるまでの流れとは

ここまで読んだ方は「労災保険は良い制度だ」と感じていただけたと思います。

しかし、労災保険の説明としては「これで半分」です。次に重要なのは「どうやったら労災保険給付が支給されるか」です。

つまり、あなたのそのケガまたは病気が「労災によって引き起こされた」と認定されなければならないのです。

これはトラブルに発展する可能性もはらんでいます

労災保険が降りるまでの流れとは(1) 労災認定の基準とは

労災認定を受けるには、「業務遂行性」と「業務起因性」が必要とされています。2つとも法律用語なので、噛み砕いて表現するとこうなります。

①労働者が会社の支配下にあることが労働契約で確認できる

②労働者が労働契約の内容の業務を行っていた

③労災が起きた時間が明確である

④業務が原因でケガまたは病気が起きた

この判断は、簡単ではありません。労災認定をする労働基準監督署は、個別のケースごとに判定します。

例えば、従業員が駅前で自社のパンフレットを配布しているときに、誰かに腰を蹴られて負傷した場合、その「誰か」が重要になります。

蹴った者がその従業員とまったく関係ない場合、労災認定される可能性があります。

しかし蹴った者が以前からその従業員を恨みに思っていた場合、労災認定されないかもしれません。 

労災保険が降りるまでの流れとは(2) 労働基準監督署へ申請|証拠書類も合わせて提出

労災認定を受けるためには、被害を受けた労働者が労働基準監督署に請求するのですが、手続きが煩雑になったり、ケガや病気のためにすぐに請求できないことが想定されるので、多くの企業は総務担当者などが被害労働者に代わって手続きします。

労災として認められるには、上記の①②③④をクリアしていることが必要です。ですので労働者や総務担当者は、「①②③④に該当する」という「証拠」を用意しておく必要があります。 

労災保険が降りるまでの流れとは(3) 労働基準監督署の調査 

労働基準監督署は①②③④、つまり「業務遂行性」と「業務起因性」を厳格に調査します。それは、労災に該当しないケガまたは病気に対して給付を支給してしまったら、労災保険財源を不当に使ってしまうことになるからです。

そこで、例えば建築現場で労災事故が起きた場合、労基署は工事をいったんストップさせて徹底的に現場調査を行うこともあります

これは、使用者がきちんと労災防止策を講じていたかを調べる目的もあります。

労災保険が降りるまでの流れとは(4) 労災認定後は給付の申請手続きを

労災認定されれば、労働者としては「ひと安心」といえるでしょう。後は、労働基準監督署の指示通りに書類をつくるだけです。

また、会社が手続きを代行してくれる場合、労働者がすることといえば、サインまたは押印くらいです。

労災を巡るトラブルでお困りなら弁護士へ相談を

労災保険については、以上のことを知っておけば、万が一のときに困らないでしょう。

しかし最後にひとつだけアドバイスさせてください。それは「労災に見舞われたら、弁護士に相談する」ということです。

特に日頃から「自分の勤め先はブラック企業かも」と感じている人は、会社による「労災隠し」を警戒してください。

例えば、会社が労働基準監督署に対し、「うちはそんな業務は指示していない。その労働者は会社の指示を無視して行動し、自らの不注意でケガを負ったんだ」と主張したら、労災認定の手続きは難航します。

そのような事態を避けるために、労働問題に強い弁護士に相談をしましょう

一度でも弁護士に相談しておけば、会社の上司から「絶対に労災として認めないからな」と脅されても、「では弁護士に来てもらいます」と言うことができます。

それだけでも威力を発揮することがありますし、それでも会社側が動じなかったら、その後の対応を弁護士に相談しましょう。

労災保険とは?働く人が絶対に知っておくべき労災のこと〜のまとめ

労災保険は労働者の身近に存在し、労働者の強い味方であるにも関わらず、あまり労働者に知られていません。

むしろ雇用保険の方がよく知られています。退職したときにおカネがもらえるかどうかがかかっているので、労働者としては「勉強のしがい」があるからでしょう。

万が一の事態に巻き込まれなければ意識することがない労災保険ですが、労災保険を学ぶことで「働くとは」「職場の危険とは」といったことを知ることができます。

働く意識を高めるためにも、労災保険を知っておいてください。
この記事の作成者

カケコム編集部